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緊急事態宣言下におけるCOVID-19ワクチン接種の
  ためらいと関連した社会経済的および行動学的特徴
Socio-economic and behavioral characteristics associated with COVID-19 vaccine hesitancy under a declared state of emergency in Japan

​本研究のまとめ

新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大地域におけるワクチン接種に消極的な人々の特徴を明らかにし,ワクチン接種を促進する効果的な方法について検討した。

・2回目の緊急事態宣言が発令された10都府県に在住の方を対象にオンラインアンケート調査を行い,17,911名のデータを分析対象とした。(アンケート実施期間:2021年2月24日〜2021年3月1日)

・t検定の結果,女性,未婚者,子供がいない者,医療従事者でない者,そして現在または過去に身体疾患の治療を受けていない者において,ワクチン接種に対するためらいが見られた

・特に,現在または過去に身体疾患の治療を受けているかどうかは,最も効果量の大きい変数であった。

・重回帰分析の結果,若年者,政府によるCOVID-19関連の情報を信用していない者,ソーシャルメディアによるCOVID-19関連の情報を信用していない者,そして感染予防行動の重要性や必要性を理解していない者は,ワクチン接種に対するためらいが見られることが分かった。

・特に,感染予防行動の重要性や必要性を理解しているかどうかが,ワクチン接種に対するためらいに最も強く影響する変数であった

・ワクチン接種を促進する上で,対象となる人物を上記の特徴に沿って検討することや,予防行動を促す際にその必要性についても説明すること,また政府や公的機関に加えて,様々なコミュニティの代表者と連携し,共に普及活動を行うことが効果的であると考えられる。

 

本研究成果は,以下の論文にまとめられて,2022年4月1日に国際学術雑誌『Brain, Behavior, & Immunity - Health』にて公刊されました。

Socio-economic and behavioral characteristics associated with COVID-19 vaccine hesitancy under a declared state of emergency in Japan

Naho Suzuki, Tetsuya Yamamoto, Chigusa Uchiumi, Nagisa Sugaya

Brain Behav Immun Health 2022, 22, 100448

doi: 10.1016/j.bbih.2022.100448. 

主な結果

(1)デモグラフィック変数の中で,現在または過去に身体疾患の治療を受けていないこと等が,ワクチン接種をためらうことと関連する 


t検定の結果,女性(d = 0.08),未婚者(d = 0.26),子供がいない者(d = 0.28),医療従事者でない者(d = 0.28),現在または過去に身体疾患の治療を受けていない者(ds = 0.30)は,ワクチン接種意図が有意に低いことが分かりました(ps < 0.05)。この中でも特に,現在または過去に身体疾患の治療を受けていないという変数は,ワクチン接種をためらうことと大きく関連するということが分かりました。

ワクチン接種をためらう人々の特徴

(2)COVID-19の感染予防に関する変数の中で,感染予防行動の重要性や必要性を十分に理解していないこと等が,ワクチン接種に対するためらいの大きさを有意に説明する変数である

重回帰分析の結果,若年者(β=0.12),政府によるCOVID-19関連の情報を信用していない(β=0.19),ソーシャルメディアによるCOVID-19関連の情報を信用していない(β=0.04),そして感染予防行動の重要性や必要性を理解していない(β=0.48)等の変数が,ワクチン接種に対するためらいの大きさを有意に説明する変数であることが分かりました。これらの中で,標準偏回帰係数の値が最も大きかったのは,感染予防行動の重要性や必要性を理解しているかどうかに関する変数でした。

ワクチン接種のためらいと関連する心理社会的変数

今後の展望

 本調査では,COVID-19の感染拡大が顕著である地域において,ワクチン接種に消極的な方の特徴を明らかにしました。ワクチン接種を促進する際には,これらの特徴を考慮して進めていくことが大切であると言えます。例えば,対象となる人物を上記の特徴に沿って検討することや,予防行動を促す際にその必要性についても説明すること,また政府や公的機関に加えて,様々なコミュニティの代表者と連携し,共に普及活動を行うこと等が,効果的な方法である可能性が考えられます。

​(文責:鈴木菜穂)

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